11.煙突を屋根に載せるバカ
ログハウスには薪ストーブがよく似合います。薪ストーブには煙突がつきものです。したがってログハウスには煙突が不可欠です。
煙突で一番お手軽なのはステンレスで先端がHの形になったやつですが、余りにも安っぽすぎてミスマッチです。そこで屋根に煉瓦の煙突を作りたいと思いました。
まず第1の問題は急勾配(45°)の屋根にどうやって煉瓦の煙突を固定するかということです。いろいろ調べてみると、そもそも煉瓦の煙突というものは地面から立ち上がっているべきもので屋根の上から始まるのではないことが分りました。妻壁に沿って地面から立上がった煙突が屋根を貫通しているというのが本来の姿です。
さすがにそこまではできませんが、やはり煉瓦の煙突以外は考えられません。煉瓦は1本が3kg弱なので100本使うと300kg近くになります。煉瓦のように見えるタイルもあり、煉瓦のように見える煙突はたいていこれですが、最初から本物しか使わない(「○○のように見える□□」はすべて邪道)と決めていたので全く採用する気にはなれません。
色々と考えてはみましたが、結局、無理矢理煉瓦の煙突を屋根に載せることにしました。煉瓦の煙突の外観上の誘惑に勝てなかったのです。屋根の垂木だけではとうてい煉瓦の重さに耐えられそうもないので90mm角の補強材を2本入れ、煉瓦の寸法に合わせて階段状にして滑らない工夫をしました。

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煙突受けの補強材。 90mm角の補強材の巾半分に階段状の 刻みを入れ、さらに45mm×90mmのささ ら桁状の材を添えた。 | 煙突カバー |
第2は煙突トップをどうするかということです。市販品の煙突トップもありますが、やはり煉瓦で作りたいと思いました。サイズがあまり大きくないため煉瓦でアーチを作るのが難しいので、山形の煙突トップを作りました。
開口部が大きいので、夏の間はカラー鉄板で作ったカバーを被せ、鳥の巣や夕立から守ることにしました。
第3は接続部の雨仕舞いです。ルーフィングを張り、カラー鉄板で巻いた上にアスファルト・シングルを張り、アルミの水切り金物をつけました。コーキングも入念に行いました。
心配していた雨漏りもなく、鳥取県西部を襲った地震にも問題なく耐えて安心していたら、落し穴がありました。屋根と煙突の間に挟まれた谷の部分の雪が落ちず、冬中雪が積もったままの状態となり、付け根からしみ込んで、15年ほどの間に煙突を載せた補強材を腐らせてしまったのです。
入念にコーキングしたつもりでしたが、すきまがあったのでしょう。部屋の内部から補強材が下がってきているのが見えました。
300kgもある煙突が落ちたり、倒れたりすると危険きわまりないので大ハンマーを持って屋根に登り、壊しながら撤去しました(涙)。今度は妻壁から横に煙突を抜いて、先端がH型のものになりそうです。
では、どうしても屋根に煉瓦の煙突をつけたかったらどうしたらいいのでしょうか?
今のところでは棟木をダブルにして頂上につけるのがいいのではないかと思っています。そうすれば雪のたまる心配はないし、煙突の荷重は2本の棟木で受けられます。棟木をダブルにできない場合でも煙突の幅を広くして頂上までカバーしてしまうようにすれば雪の溜る心配はありません。
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屋根と煙突に挟まれた部分に雪が 溜まってしまう。 | 棟木をダブルにして頂上に煙突を つければ雪は溜まらない。 |
12.ログハウスにもいろいろあることを知らないバカ
ログハウスとはなんぞや。
工法的には丸太組み構法(材を横に積む)によるものがログハウスです。
材料的にはログ(丸太)を材料に使った家はとりあえずログハウスです。
一般的にはこの条件をどちらかひとつでも満たせば一応ログハウスということになっているようです。
従って、
(1) 丸太を材料に使い丸太組み構法で作ったもの。(フル・ログと呼ばれ、ログハウスの王道です。)
(2) 四角や楕円形、小判型等にあらかじめ製材した材を使い、丸太組構法で作ったもの。(角ログ、マシン・カット。ごつごつ感が抑えられ、スマートな外観になりやすい。)
(3) 丸太を構造材に使い、在来工法で作った物。(ポスト・アンド・ビーム。丸太の柱や梁を現わしにしてログハウスであることを主張しています。ティンバー・フレームと呼ばれる大断面の角材を使用したものも柱や梁を現わしにしていれば一応ログハウスというようです。)
(4) 在来工法で柱と柱の間に丸太を横に落しこんだ物。(ピーセン・ピース。フル・ログよりも設計の自由度が大きい。これにもポスト・アンド・ビームと同様、角材を使用したものあります。)
これらは、どれもログハウスです。
さらに細かく見ると、ノッチの刻み方(ラウンド・ノッチ、サドル・ノッチ、スカンジナビアン・ノッチ、ダブテイル・ノッチ、バット・メソッド等)、小屋組の方法(トラス、束立て、ゲーブルエンド等)、樹種(WRC、スプルース、パイン、杉、桧等)等でさまざまな分類ができます。
これらの組合わせで一口にログハウスといっても無数のバリエーションがあります。
一方、ログハウスには分類されないけど木をふんだんに使っているものもあります。
構造材を現わしにした在来工法で、外壁・内壁に弓形の板を横張りにしたものや、鎧張りにしたもの。これらはウッディハウスと呼ばれているようです。
ログハウスに住みたいと思うと、躯体以外にも基礎の形式/材料(布基礎、独立基礎、高床式等/コンクリート、自然石、煉瓦等)、屋根のかけ方/材料(切り妻、寄棟、腰折れ、陸屋根等/ウッド・シェイク、アスファルト・シングル、鋼板、コロニアル、緑化等)等注文をつけたくなる箇所はいくらでもあります。
これからログハウスを作ろうと思っている方は、周囲の状況や自分のこだわり、機能、予算、工期等の条件をすべて満たすログハウスが必ずあるはずですから、しっかり見極めて下さい。逆に、欲しかったのはログハウスではなくウッディハウスだったと気づいた方は、間違わずにウッディハウスを選択して下さい。
なお、woody は木質のとか木のようなという意味ですから、「木の家」は正しくはwooden houseです。ウッディハウスには私の皮肉が込められています。
13.雑誌から知識を得ようとするバカ
とりあえずログハウスに興味を持った人が情報を得るのは雑誌からでしょう。「夢丸」などには、丸太組み構法の解説、チェンソーの使い方、ノッチやグルーブの刻み方、開口部の納め方、トラスの作り方、電動工具の選び方、ログスクールの案内、材料の入手の方法などが詳しく載っていて、何冊か続けて読めばかなりの情報を得られます。また継続して読んでいれば建築法規が改正された時などにもすぐに知ることができます。
そういう本当に価値のある記事には私も助けられました。でもそういう価値のある記事とただ煽り立てるだけの記事が混在しているのが雑誌です。
雑誌では毎号のように、セルフ・ビルドでログハウスを作った人が登場して、「経験はなくても工夫とやる気さえあれば何とかなるものですよ。」とか、「作業は楽しかった。苦しいと思ったことなど一度もなかった。」などと語る記事が載っています。雑誌を買い求める人の中には背中を押してもらいたくてうずうずしている人もいます。そんなときに、こんな記事を読めば、わが意を得たりと無謀な着工に走ることも十分考えられます。
私もログハウスの醍醐味は知恵と勇気を振り絞ってセルフ・ビルドすることだということに賛成です。しかし、周到な準備があればこその知恵と勇気で、衝動的にやり始めても知恵と勇気だけではどうにもならないこともあるのです。残念ながらセルフ・ビルドに挑戦した人の全員が成功した訳ではありません。
ログハウスをセルフ・ビルドしようと考えている方は、無責任に煽り立てる雑誌の記事ではなく、あなたの周りの否定的な人たちの意見を冷静に聞いてみてください。たいていの場合、自分には耳の痛いことを言う人が、正しいことを言ってくれているものです。周りの否定的な人たちを納得させることもできないようなら(その程度の図面を描いたり、工程・資金計画を立てたり、情熱を見せることもできないなら)、計画は中止すべきでしょう。
14.ログビルダーをアーティストだと思っているバカ
ログハウスを建てる人はログビルダーと呼ばれます。ログビルダーと言うと何か特殊な腕とセンスを持っているように感じる人も多い(私もそう感じてました)のではないかと思いますが、直訳すると丸太大工です。日本の大工さんとそんなに違うものでもないのです。
日本の大工さんたちの法被(はっぴ)に草履(ぞうり)に鉢巻きで道具箱をかついでいる姿に比べ、ログビルダーさんたちはたとえ上半身はだかでチェンソーを使っていても洗練されているように感じてしまいます。金髪、毛むくじゃらの腕、サングラス等がかっこよく見えてしまうのです。
そういう勝手な思いこみによってログビルダーという職業にあこがれを持ち、単身カナダに武者修行に乗り込んですばらしいログビルダーになった人もいればそうでない人もいるようです。
「夢丸」等ではそんなログビルダーが建てたログハウスをまるで芸術作品のように取り上げているのを見かけます。実際、ログエンドに芸術作品のような彫刻がしてあったり、開口部に派手なデザインカットがされているのもありますが、私はちょっと違うぞと思っています。
ログハウスはまず家でなければなりません。雑誌では生活感の全く感じられないきれいなカラー写真ばかりが紹介されていますが、家というのは生活の場であり、もっと現実的で生々しいものだと思います。そんなきれいごとでは済まされない場では、掃除が簡単である等、生活しやすいことが最優先されるべきであり、美術的、芸術的な付加価値は不要です。
本来のログハウスは付加価値などなくても十分すばらしいものです。
15.節だらけでも平気なバカ
日本建築は本来木造建築です。日本民族は法隆寺の時代からずっと木で建物を建ててきました。世界中で日本民族ほど木構造に精通した民族はいません。長い歴史の中で発達してきた伝統構法と呼ばれる古来の木造建築法を簡略化・発展させた木造軸組構法(在来工法)は世界に類を見ない日本独自のものです。
ハウスメーカーの家が建てられるようになるまでは、家は大工さんが在来工法で建てるのがほとんどでした。棟上げの日には親戚や近所の人が大人も子供も寄り集まって重い梁を屋根に上げる手伝いをし、棟が上がるとみんなで祝うのが当たり前だったのです。
従って、我々の世代以前の日本人には建築材としての木は今よりもずっと身近なものだったし、木に関する知識もありました。また、木の表面の質感や色合いを楽しむ繊細さも持っていたのです。
ところが、輸入物のマシンカットのログハウスでは我々の世代以前の日本人が見ると「うっ」というような節だらけのフローリングや羽目板が平気で使ってあります。ログハウスでは、節を気にして材料を選ぶなどもってのほかといった感じです。
節といっても元は枝です。節の周りは加工し難い、くるい易いという欠点はあるものの、同じ木の一部分ですから、話にならないほど劣っているわけではありません。生きている節は他の部分より堅く密度が高いというすばらしい性質も持っています。節があるというだけで、毛嫌いするほどのものでもないのです。
それでも私が輸入物のログハウスのフローリングで「うっ」といってしまうのは、節だらけであることの他に、まるで何も考えずに張ったように見えるからだと思います。
日本の大工さんならこんなことはしません。縁側に縁甲板を張る場合には全部を並べて見て、丹念に色あわせをしてから張るのが常識です。
しかし、輸入物のログハウスではこんなことは全く考えずにスピード優先で上から順番に張っているようです。建物に対する作り手の心遣いが感じられません。
贅を尽くしてなんでもかんでもすべて無節で揃えるなどということは、我々庶民にはできないし、したいとも思いませんが、せめてフローリングくらいは節の少ないものを選んだらどうかと思います。あれだけ節があってもストッキングを伝線させないためには相当厚く塗料で仕上げなければならないだろうし、そんなに厚く塗料を塗るのなら無垢をありがたがる意味もないと考えるからです。
どうしても予算的に節だらけのものしか使えないとしても、ちょっとでも目立ちにくくする工夫をするのが建物に対する愛情であり、職人気質というものではないでしょうか。
16.たき火を悪者にするバカ
たき火-枯れ木や枯葉を集め、これに火をつける。ただ燃やせばいい訳ではありません。燃やすだけなら焼却炉を持ってくれば事足ります。自由自在に火を操る。これぞ男のロマンです。太古の昔はどうやっていたのでしょうか。村長さんクラスの人しか持っていない火きり棒とリスの巣かなんかで火をおこしてもらい、うやうやしく分けてもらっていたのではないでしょうか。(と思っていましたが、調べてみると火きり棒で火をおこしていたのはそんなに太古の昔でなく縄文時代くらいから江戸時代くらいまでだそうです。火きり棒というとものすごく特殊な方法のように思っていましたが、つい最近まで使われていた身近な方法でした。)
意気揚々と「どんぐり館」を着工したばかりのころ、宿泊代がもったいないのでテント生活をしていました。簡易水道はあるものの電気を引いてない山の中ですから日が暮れてしまうとすることがありません。暗くて寒いのはつらいので思い切ってたき火をすることにしました。
初めての場所で火を点けるというのはかなり勇気がいります。最初に考えるのは山火事になったらどうしようということです。とりあえずバケツ1杯くらいは水の用意が必要です。
水の用意ができれば点火です。でも、秋や冬の枯葉や枯草が多いときはともかく、春先は燃やせるものが少なく、そう簡単にはいきません。生でも燃える松葉にまず火を点け、生の木の葉や枝をかぶせたら団扇(うちわ)であおいで無理矢理燃やします。煙でもうもうになって生木をくすぶらせ、暖を取りながらとりとめもない話をして何時間も過すのです。
こんなことを何度となくやっていると、メンバーはみんな自然にたき火の名人になりました。試行錯誤を重ねていろんなたき火のテクニックをあみ出しました。飲み食いのペースも自然にたき火に合わせるようになり、いつの間にかたき火が生活の一部のようになりました。
完成後、いろんな人が「どんぐり館」に泊りにきましたが、たき火をしていて不機嫌になる人はいません。みんな大喜びで寄ってきます。
たき火の魅力はゆらゆら揺れる炎と何ともいえない暖かさだと私は思っていますが、炎もよく見えない昼間からいきなりはまってしまう人もいれば、真夏に汗まみれになりながら夢中になってたき火をしている人もいます。子供の頃は火で遊んでいるとおねしょが出るとよく注意されましたが、そんなことを言ってくれるおばあちゃんもいません。時間のことなど忘れて、たき火に没頭してしまいます。
 | 仮組場での作業終了後のたき火 |
時代の流れでわが家でもIHクッキングヒーターが導入され火を使わない調理がメインになりました。おまけに地球温暖化問題で、CO2 を排出するという理由からたき火は完全に悪者にされました。しかし最近では、木を燃やしたときに出るCO2 は、木が成長過程で光合成により大気中から吸収したものなので、木を燃やしても全体として見れば大気中の二酸化炭素量を増加させていないという説が主流の様です。(マスコミはよってたかってたき火を悪者にしたときくらいの意気込みで間違っていたことを発信して欲しいと思います。)
口うるさい人は、まだCO2 以外にもダイオキシン問題や、土壌、土中の微生物等に与える影響の問題等があり、たき火は推奨できるものではないと言っていますが、これらは目くじら立てるほどの問題ではありません。
ゆらゆら揺れる炎を自在にコントロールして調理をするような技をすたれさせないためにも、みんなで胸を張ってたき火をしましょう。
17.雑を醍醐味だと思いこむバカ
輸入物のログハウスに共通する特長として仕上げが雑なことが上げられます。どのくらい雑と感じるかは個人差があるでしょうが、私は話にならないほど雑だと感じました。特に何でもかんでもビスでとめて、頭が丸出しになっているのはプロの仕事とは言えないと思います。外国では室内を土足で歩くのが基本ですから、雑と感じるレベルが日本人と全く違うのでしょう。
日本人の中にも雑なのが好きな人もいます。雑が好きであること自体に問題はありませんが、私が面白くないと思っているのは、ログハウスであれば雑がいつの間にか醍醐味になったりするところです。
ハウスメーカーの家で雑が醍醐味になることはまずありません。リビングの窓に少し毛羽立った額縁がビスの頭丸出しで止めてあったり、2×4の材で作った見るからに安そうな階段が設置されていたりすることなどあり得ないのです。それがなぜかログハウスでは堂々と認められています。認められているどころか醍醐味なのです。以前見に行ったBフットのマシーンカットのログハウスでは営業マンが「仕上げは雑ですよ。」としゃーしゃーと言ってました。こんな細かいところが気になるような小心者は、ログハウスに住む資格がないないということなのでしょう。
この「弱点を堂々と長所として売り込む」ということは、考えてみればすごいことで、こんな厚顔無恥はログハウス以外ではおよそ考えられません。
ログハウスは従来の日本の家屋とは明らかに異なる性格を持った住宅ですが、輸入ログハウス・メーカーの言うとおりに雑を醍醐味だと思う必要は全くありません。私はピーセン・ピースの自宅では国産の材の繊細さを生かしたログハウスにしたいと思い、地元岡山の杉を使い、内部の造作は大工さんと一緒にやりました。和のテイストを持ったログハウスになりましたが、それで醍醐味がなくなったわけではありません。
18.バカ力(ばかぢから)にたよるバカ
カタカナの「カ」と漢字の「力」はほぼ同じなのでとふりがながないとどちらか分りません。学生の頃コンクリート工学のテキストに「プレストレス力」(ぷれすとれすりょく)というのがあり、「ぷれすとれすか」というのはブルガリアあたりの学者の名前かと思っていたのを思い出しました。
それはさておき、若いうちは力がありあまっていて、「バカ力」を出すことを楽しんでいたように思います。力を誇示するのはある意味動物(特に♂)の本能のようなものですから、思い切り「バカ力」を出して作業し、へとへとになってもお昼ご飯を思い切り食べて少し休憩するとまた「バカ力」が湧いてくる、そんな作業日の生活に変な爽快感さえ感じていたのです。
そういった状態ですから、どうしても道具や治具を工夫するよりも「バカ力」でやっつけてしまいます。ログハウス作りにはある程度の「バカ力」が必須です。いくら小器用にやろうとしても、とりあえず4mの丸太くらいは一人で転がせないとどうにもなりません。その意味では「バカ力」=「正義」です。
 | 仮組場でのバカ力 末口24cmの4m材をかつぐ。 推定重量 75kg以上 |
それはそれで一向にかまいませんが、いつまでも「バカ力」が出せるわけではありません。「バカ力」を出さないで楽をする方法があればそれにこしたことはないのです。高校生の頃、数学の先生が「横着は発明の母」と毎時間のようにおっしゃっていましたが、本当だと思います。
横着がほんのちょっとの工夫を生み、その工夫の積み重ねが偉大な発明につながってきたのです。発明はできなくてもちょっとずつ横着して工夫を重ねましょう。そうすることによって「バカ力」の出し惜しみができます。
できれば「バカ力」がなくなる前に工夫することを覚えましょう。年をとって「バカ力」がなくなったときにあわてないために。
19.バカ棒を捨てるバカ
土木工事業界には「バカ棒」というのがあります。単に「バカ」と言ったりもします。レベルで同じ高さを何カ所も出したい時、スタッフ(箱尺)の代わりに必要な箇所に一箇所だけマークした棒を使います。これが「バカ棒」です。
一箇所だけというところがミソで一箇所しかマークがないので間違えようがありません。「バカ棒」を作るのに難しい理屈はいりません。要はどこにでも転がっている桟木の残材などあり合わせの物に線を1本引いたものが「バカ棒」なのです。
同じ長さの物をたくさん作る時に適当な長さの棒を作り、これを基準にします。これも一種の「バカ棒」でしょう。いちいちスケールで測らないので、手間がかからず、バカでも間違うことがなく、万一「バカ棒」そのものが間違っていても全部間違っているので何とかなったりします。
「バカ棒」は単純なだけに、用途がとても広く応用もきくので、私は「どんぐり館」を作っている間は「バカ棒を征する物がログを征する」をスローガンにしていました。
基礎の床堀りをするとき必要な幅の棒に垂直に棒を打ち付けてT定規の様なものを作って深さをマークしておくと簡単に必要な幅と深さがわかります。(バカ定規)

| バカ定規で床堀をチェック |
 | 燃えるバカ定規 間違って燃やしたわけでは ありません。 |
屋根にシングルを張るときにも2mほどの材にシングルの割付間隔をマークした「バカ棒」で墨を出すと簡単に平行線を出せます。
またウッド・デッキに板を張るときに目地の幅の端材を夾んで打ち付けて行けば自然に等間隔の目地ができます。
是非オリジナルの「バカ棒」を作ってください。ポイントはただ一つ、誰が見ても「バカ棒」と分るようにしておくことです。そうしないと残材と間違って捨てられてしまいます。
20.外観にこだわるバカ
「セルフ・ビルドのログハウスはスピリットで勝負しているので外観なんか気にしない」というのは全くの正論です。私も何度かスピリットに圧倒されるような建物に出会いましたが、それらは決まってセルフ・ビルドでした。
我々は残念ながらそんな燃えたぎるようなスピリットを持ってログハウス作りを始めたわけではなかったので、「どんぐり館」では最初から外観にこだわりました。「シロートが集って不細工なログハウスを作った」と言われたくないという下賤な思いがあったのです。
外観は1/50程度の立面図を書けばだいたいわかります。1/50の立面図を何方向か書いて「どうもぱっとしない」と思うようなら、それは間違いなく失敗です。そのとおり作るとぱっとしないのが50倍の大きさであなたの目の前にそびえたつことになります。すぐ計画変更をすべきです。
ログハウスの外観に大きな影響を与えるのはまず屋根と小屋組みです。急勾配の切妻屋根がログハウスの定番です。小屋組みは束立てにすると軽薄になるので、おすすめはどっしりとしたトラスです。「どんぐり館」ではメンバーが寄ってたかって好き勝手なトラスを主張したため、トラスの展示会(キングポスト・トラス、クイーンポスト・トラス、フィンク・トラス)になりましたが、おおむね好評でした。
 | 南側 トラスの王道 キングポスト・トラス |
 | 北側 クイーンポスト・トラス ドアを付けたので必然的に この形になりました。 |
 | 東側 玄関上のドーマー フィンク・トラス かなり面倒です。 |
次に外観に大きな影響を与えるのは窓です。日本の一般的な家では引き違い窓が多いですが、窓のまん中の縦の桟がじゃまです。ログハウスにはすべり出し窓の方が似合うように思います。
寒冷地では断熱、結露防止の観点からペアガラスをよく使用します。ペアガラスを使った木製のサッシは(特に大型のものは)強度の面から作りがごつすぎて、一般家屋では使いにくいですが、ログハウスにはこのごつごつ感がぴったりです。また、トラスのはめ殺しの三角形の窓も定番です。実ははめ殺しの窓は掃除が大変という重大な欠点がありますが、外観にこだわるなら欠かせません。
最後にもう一つ忘れてはならないのがログの口径です。末口20cm以下のログではどうしても貧乏くさくなります。でも太すぎるのも下品です。適当なところを探りましょう。
「夢丸」には組み上げる時の労力を考慮して太くて重い材を下に、細くて軽いのを上に使いましょうと書かれていますが、少しくらい細くても画期的に楽になるわけではありません。外観にこだわるなら中段あたりに細い材を集め、上にも下にも太い材を配置するのがフレアカットとのバランスがいいと思います。太くて重くても、こうすることで外観がかっこよくなると思えばバカ力も出せるというものです。
またトラスから上はどうせレッカーのお世話になるのですから、棟木も思い切って太い材を選び、途中で継ぐ場合は末口同士を継いで元口を外にもってくるのがいいと思います。びっくりするほど太い丸太を使っても、遠くのものは小さく見えるので太すぎることはありません。