ワニ工房

こだわりの木のおもちゃと子供椅子

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31.人を煽るバカ、煽られるバカ
 
  「♪ 同じバカなら煽らにゃ損、損 ♪」ではないのでしょうが、人が何か面白いことをしようとすると必ず煽る輩がでてきます。ほとんどの場合、この連中は悪意など全くなく、ただ面白がって無責任に騒いでいるだけの愛すべきバカたちです。
 
 ログハウスの計画を聞きつけると、このバカたちは「もっと太い丸太のほうがかっこいい」とか、「ここにもコンセントがあったら便利」とか、「風呂から月が見たい」などと勝手気ままに煽ります。自分が金を出すのでもなければ手を貸すのでもない、ただ純粋に面白がっているだけのお気楽な連中の言うことですから、真面目に相手する必要はありませんが、この無責任なバカ騒ぎの中にシロートならではの目を見張るような大胆なアイデアが隠れていることがたまにあるのでムゲにすることもできません。
 
 また、「夢丸」等のログ雑誌にも煽られます。(これらの雑誌は煽るために作られているのです。)セルフビルドした人の体験記や資金計画、ノッチやグルーブの刻み方やトラスの作り方等を見ていると、自分でもやれそうに思えてきます。
 セルフビルドした人だって本当は、最初はびびっていたり、途中でお金が足りなくなったり、仲間と喧嘩しそうになったり、調子に乗って切りすぎたりと、「夢丸」はおろか家族にも言えないようなことをいろいろやっているものですが、完成してしまえばこんなことはすっかり忘れて楽しい事ばかりが強調されてしまうのです。
 
 これくらい煽られても、こんな企てはほとんどの人にとって初めての経験ですから、本来なら簡単に踏み出せるものではありませんが、男女の間のように、障害がある程度あった方が逆に燃え上がることもあります。単なる「無謀な企て」が「男のロマン」に思えたりして自分自身に酔ってしまい、ぼっと火がつくこともあるのです。
 
 いったん燃え上がってしまうともう止まれません。煽られたバカは、最初は途方もなく高いと思えたログハウス作りの壁が、何でもないと思えるようになっています。そして、調子に乗ってあれもこれもと無責任かつ大胆なアイデアを取り入れているうちに「最初恐る恐る心に描いていたこぢんまりとした丸太小屋」を全く別物の「堂々たるログハウス」に増長させるのです。
 
 このバカにつける薬は工程表と見積書しかありません。完成前に腐るという最悪の結果になる原因はたいてい時間切れか資金切れですから何とかして自分なりの工程表と見積書を作ってみて下さい。
 

  32.家の中の危険を知らないバカ

 意外なことに家の中での事故死は交通事故死より多いというデータがあります。平成18年には12,000人以上の方が家庭内の事故で亡くなっています。その中で最も多いのは高齢者の浴室での溺死です。

 私は階段も非常に危険な個所だと思っています。うちのカミさんは前に借りていた家に引っ越した早々に、階段から落ちて尻を骨折しました。(一つ間違うと半身不随になるところだったと言われました。)尻にも折れるような骨があるとは知りませんでしたが、尻の骨は、折れてもギブスで固めることも他にどうすることもできないそうです。ただじっとおとなしくして骨がくっつくのを待つしかないというこれ以上考えられないほど悲惨な状況でした。

 転落した原因は、はっきりしていました。
 まず勾配がきついこと。他に余っているスペースもあるのに、45度以上の急勾配の階段でした。
 次に滑りやすいこと。階段なのに滑らないことを全く考慮してない塗料が塗られていました。
 3つめは狭いこと。狭いくせに立派な手すりがついていてますます狭くなっていました。狭いと足がもつれやすいのです。
 最後は、ほとんど直線の階段だったこと。下から3段が30°ずつの回り階段で上の11段は直線でした。急勾配で直線の階段は落ち始めると途中で止まれません。最上段で足を滑らせたうちのカミさんは一直線に3段目まで落ちて曲っている壁にぶつかってやっと止ったのです。
 この家の設計者は階段から落ちる危険など全く考慮していないことがよく分ります。

 この事故を教訓に、ピーセン・ピースのわが家では階段は蹴上げ21cm以下、踏面25cm以上、有効幅95cm以上※(注5)の踊り場付き折り返し階段という条件をつけました。(厳しそうに見えますが、踏み板の横幅を15cm、奥行きを5cmほど広くして、踊場をつけ、段数を1段増やしただけです。)そして、念のために踏板には滑り止めの溝を切りました。

 たったこれだけで、わが家の階段は途中ですれ違うこともできるし、子供と手を繋いだまま上がり下りもできるという一般家屋の階段としては破格の広さになりました。2階にエアコンを設置しにきた電気屋さんも大きな室外機を余裕で持ってあがれたので絶賛してくれました。

 さて、一般にログハウスの階段は丸太を半割りにして踏板を作り、曲り木の手すりをつけるという「形」にこだわったものが多く、階段の安全性などほとんど考慮していないケースが多いと思います。セルフビルドの小振りなログハウスでは、そんなに階段にスペースをさくわけにもいかないでしょうから、折り返し階段は難しいかもしれませんが、勾配をゆるくすることを考えてみてはどうでしょうか。踏板をもう1段増やすだけで驚くほどゆったりした階段になります。

 もう一つ、半割りの丸太で踏板を作ると乾燥収縮によって踏面が凸に変形し、滑りやすくなるという欠点もあります。踏板に使う材が決ったら、できるだけ早く半割にして乾燥させるのがいいと思います。

 ※(注5) 建築基準法では一般家屋の階段は幅75cm以上、蹴上げ23cm以下、踏面15cm以上と決められています。法規上は最急約57°というかなりの急勾配まで許されているのです。
 

33.すっぴんを喜ぶバカ

 

 環境にやさしい(エコ)という言葉が流行っています。われわれ人間が地球に住んでいく以上、地球の環境破壊につながるようなことをしていていいはずはありません。わが家を建てようと思った時もすぐに「環境にやさしい家」という言葉が頭をよぎりました。

 

 そんな時、「すっぴんの家」というのをインターネットで見つけました。「自然素材による健康にいい」家というのは本来は「環境にやさしい」とはかけ離れていますが、こんなのもいつの間にかエコというようになっているのです。「すっぴんの家」では、コンクリート打放しの基礎、集成材の構造材をそのまま現した嘘も隠しもない潔さを全面に謳い、から松の無垢フローリング等、無垢の木材をふんだんに使っていることをアピールしていました。確かに他のハウス・メーカーの家のように石膏ボードで覆ってしまい、クロスで仕上げるよりも断然健康的です。

 

 家の近くにもモデルハウスがあることが分かったので早速見学に行きましたがパソコンの画面で見るのと実物とは大違いだということを思い知らされました。

 

 すっぴんがすばらしいのはすっぴんに耐えられる素材だからです。すばらしい素材があってこそのすっぴんなのです。私が考えるすっぴんのすばらしさは、上辺だけのメイクをしたのでは得られない底光りのするような美しさですが、残念ながらこの家ではそうは考えてないようです。

 

 この家では素材はさておき、すっぴんであること自体にすばらしさを見いだしているのです。すっぴんにはどうかなと思うような素材(人工乾燥され表面がガサガサの集成材の梁、センスのない補強金物、節だらけのから松の無垢フローリング等)を堂々とすっぴんで出されると、「おいおい」ということになります。

 

 このあたりを当時小学2年生だった息子もカミさんも鋭く感じたようです。息子は、このモデルハウスでいきなり「さっき見た家(○サワホーム)の方がよかった」と爆弾発言をしました。さすがに、カミさんは大人なのでその場はなんとかうまく取り繕っていましたが、家に帰るなり「あんな貧乏くさい家はだめよ!」と一刀両断でした。

 


 34.エコなら金に糸目をつけないバカ

 

 わが家を建てるに当たり、何らかの環境に優しい(エコ)システムを導入したいと思い、いろいろと調べているうちに、インターネットでOMソーラーというパッシブ・ソーラー・システムを見つけました。パッシブというのはアクティブの逆で受動的という意味です。建築的な方法や工夫で太陽熱を自然のまま利用し、汚れを生まず環境にやさしいというやりかたです。具体的には屋根で集めた熱をファンで床下に送り、床下暖房に使おうというものです。

 これを取入れるためには、当然それなりの断熱性能や気密性能が要求されるので、機能的にも優秀な家でなければなりません。これはすごいと思いました。環境にやさしく、機能的にも優秀となればわが家の希望にぴったりだと思ったからです。

 

 そこでパンフレットを取り寄せてOMソーラーについて詳しく検討してみましたが、残念なことにメーカーの主張と現実はかなり違うことが分かってきました。

 温暖な気候の岡山では床下暖房が必要なのは1年のうち1/4程しかありません。1年のうち3/4は熱など不要なのです。この間はOMソーラーはほとんど役に立ちません。無理矢理役立てようとするなら、オプションのお湯取りユニットを増設すればお湯が取れますが、お湯を取るだけならこんな大がかりなシステムでなくても十分可能です。
 逆に床下暖房が必要な真冬には太陽熱だけでは足りません。何らかの暖房システムで応援してやらなければ、天気の悪い日は1日中寒さに震えることになります。灯油で応援してやるシステムとして、オプションの床下暖房ユニットが用意されていますが、これもこんな大がかりなシステムでなくても、灯油を使った暖房なら他にいくらでももっと簡単な方法があります。

 

 このように、太陽から熱を貰おうとすると、不必要な夏には余りまくり、本当に必要な冬には全く足りないという根本的な不合理が生じるのです。また、余りまくった熱は誰も欲しがらないので売ることもできないし、簡単に他のエネルギーに変換することもできません。

 

 これに対し、太陽光発電で太陽から電気を貰おうとすると、一年を通じて極端な変動なく貰うことができます。また、電気は熱と違って簡単にいろんなエネルギーに変換できるし、売買の単価差がないので余った分を売るのにも全くロスがありません。25年くらいはかかりますが、これならモトが取れそうです。

 

 こんな理由でわが家はOMソーラーから太陽光発電へさっさと鞍替えしてしまいました。地球環境全体を考えた場合に本当に優れているのはどちらか、慎重に判断してから決めようとは思いませんでした。たとえOMソーラーの方が地球環境に優しいことが証明されたとしても、わが家ではかけたコストを有効に活用するという観点から太陽光発電を導入したいと思ったからです。

 


35.模型を作って満足しているバカ 

 

 子供の数が減ってきたせいか、あるいはTVゲームのようなお手軽な遊びが普及したせいか、模型業界はかなり小さくなっているようです。業界自体が縮小している上に、他の業種と同じくトイザラスのような大型店舗に押されてしまって、めがねをかけたおばあさんが一人で店番をしているたばこ屋兼プラモデル屋のような店がなくなってしまいました。小学生の頃は街に連れていってもらう楽しみの一つがプラモデル屋さんをのぞくことでしたが、こんな店がもうないのです。

 

 こんな下火の業界ですが、模型好きの大人のために細々と木製の模型を作り続けてくれているメーカーもあります。倒産したイマイの後を引受けたウッディ・ジョーというメーカーです。ここには、定番のカティーサーク、日本丸といった木製の帆船から法隆寺の五重塔のような建築物までかなりの種類の木製のキットがあります。さらに戦艦大和や潜水艦、零戦など、なぜ木製なのか意味不明のものまで、木製模型だったらなんでも来いといった感じです。

 

 もちろんログハウスもあります。1/24スケールのカナディアンタイプの豪快なラウンドノッチによるログハウスです。丸棒にノッチを切って積み上げる構造で、本物のログハウスと同じように見えますが、残念ながらこの模型でログハウスの作り方の勉強をすることはできません。多少時間はかかってもマニュアルの通りに組み立てて行けば、そんなに頭を使うこともなく完成できるようになっているからです。これは退屈な時に暇つぶしに作るもの、あるいはドールハウスのように模型として楽しむために作るもので、素材が違ってはいてもプラモデルと同じようなものなのです。

 

 いくら手間暇かけて精密な物を作っても(あるいは精密にすればするほど)模型は所詮模型です。模型には機能は要求されません。本物のログハウスだと基礎は上部の荷重を受けるためにコンクリートや石で作りますが、模型なら発砲スチロールでも作れます。本物のログハウスの屋根は雨を漏さないためにルーフィングを下張りし、鋼板やシングルを張りますが、模型なら絵の具を塗った紙を張るだけでもOKです。本物のログハウスでは重いドアが垂れ下がらないために蝶番を3枚使ったりしますが、模型ではとりあえずドアらしいのが付いていれば動かなくても十分です。

 木製の帆船を作ったときにも痛感したことですが、模型ではただ「それらしく見える」ことだけが要求され、ただ「それらしく見せる」ことだけに腐心するのです。 

 

 木製帆船「ハーフ・ムーン」の船首。

 

 

 同じ手間暇かけて模型を作るのなら、こんな見せかけだけの模型ではなく、これから作ろうとするご自分のログハウスのスケールモデルを作りましょう。これから作ろうとするログハウスの模型を作ることには、頭の中に描いていた構造やデザインの確認ができる、材料の拾い出しに役立つ、施工順序の確認ができる、細かい問題点が分かる、周りの人への説明がスムーズに行える、完成後に当初計画と比較できる、夢がふくらむなど数々のメリットがあり、存分に使い倒すことで本物への大きなステップになると思えるからです。

 


 36.はめ殺し窓をありがたがるバカ

 

 窓に求められる機能は採光と換気です。光と風を取り入れるために壁に穴を開けるわけですから、構造的に見ても、防犯の面から見ても、断熱の面から見ても窓は弱点です。おまけにコストの上でも弱点です。したがって必要な光と風さえ取り込めるのなら窓は小さいほうがいいに決まっています。

 

 でも、このように考えているのは私だけのようで、一般的には必要以上に大きな窓が付けられていたり、必要以上にたくさん並んで付けられているケースが非常に多いと思います。ハウスメーカーの家では小窓を並べるのが流行っていますが、ログハウスではトラスに三角形のはめ殺し窓を付けるのが流行っています。

 はめ殺しとはなんとも物騒な言葉ですが、「殺す」というのは「本来の機能を奪って動かなくする」ことです。他の業界と違って、土木・建築業界はなんでもかんでもすぐカタカナにするのを好まないようで、「フィックスト・ウインドウ」というIT業界ならすぐにでも乗り換えそうな言葉があるにもかかわらず、いまだにこんな古くさい言葉を使っています。

 

 「どんぐり館」でもトラスにはめ殺し窓を入れました。トラスいっぱいに木枠を作り、6mmのガラスを切ってもらって12mm間隔のペアガラスとしました。キングポスト・トラスとクイーンポスト・トラスの直角二等辺三角形の部分は正方形のガラスを対角線で切ればいいので簡単ですが、フィンク・トラスの超鋭角の細長い三角形の部分は面倒です。ガラス屋さんも三辺の長さだけではやりにくいと思い、細長い直角三角形から直角三角形を切り取る形で注文しましたが、はめてみるまでひやひやどきどきでした。

 さて、キングポスト・トラスのはめ殺し窓は大きく(斜辺が210cmの直角二等辺三角形×2)、デザイン上のインパクトもあり、最初は本当に明るく開放的な気分にさせてくれました。サッシメーカーと違い、手作りなのでペアガラスの間はただの空気ですが、真冬に薪ストーブを焚いても結露することもなくかなり快適に思えました。しかし、いくつか欠点はあります。

 

「どんぐり館」のキングポスト・トラス

のはめ殺し窓。

工事中なので仮足場がありますが、

完成すると吹き抜けです。 

 

(1) せっかくの開口部ですが、開け閉めできません。開け閉めできるようにすればいいのではと思われる方もいらっしゃると思いますが、三角形の窓は開け閉めできないのです。(やってみればすぐ分ります。)したがって換気の機能はありません。採光のみです。

 

(2) 結露はしませんが、冬の寒さは身にしみます。吹抜けにしていると手が届かないので開け閉めできないためカーテンも吊れません。ペアガラスにしていても熱の通過量は壁とは比較にならないくらい多いのです。
 

(3) 何年か経って汚れてくると掃除が大変です。人間は手が届きませんが、虫等がぶつかって知らず知らずのうちに汚れているのです。窓拭きをしようにも部屋の中に脚立を立てるくらいでは手が届きません。何とか手が届くようになったとしても、開かないので外側は拭けません。外側はまた別に足場が必要です。窓拭きがやりにくいために、せっかく明るいのに窓の汚ればかりが目立つようになります。日溜まりでひなたぼっこをしようとすると、フローリングに窓の汚れの影が写ったりします。

 

 ピーセン・ピースのわが家ではこんな理由で、トラスのはめ殺し窓はやめました。そのかわりに屋根に紐で遠隔操作のできる天窓をつけました。天窓は、外側は雨が洗ってくれるし内側は下を向いているので埃がつきにくく、はめ殺し窓ほどは汚れません。また、屋根についているため、採光の能率がいいので、トラスのはめ殺し窓より小さいサイズでも驚くほど明るくなります。さらに換気の能率もいいので、天窓を開けると空気がすっと流れて行くのが感じられて、とても気分良く過すことができるのです。 

 


 37.ひなたぼっこに憧れるバカ

 ピーセン・ピースのわが家では、夏の不要な直射日光をカットするためと、雨からログの壁を守るために思い切って軒を深くとりました。
岡山県南部の緯度(北緯31°)と地軸の傾き(23.4°)から断面図上で軒の深さを1.5mに決めました。こうすると春分の日から秋分の日までの間は南側の掃きだし窓からは直射日光は全く入りません。軒を1.5mも出そうとするとハウス・メーカーの家では桁を出し、ポストを立てて支えてやらなければなりませんが、ピーセン・ピースのわが家では大断面材を使っているので余裕で張り出すことができます。

 さらに窓には旭硝子の「もくまど」というLow-E ペアガラスの木製サッシを採用して万全を期すことにしました。Low-E とはLow Emissivityすなわち低放射という意味でコーティングにより赤外線を反射させ、熱を通さないということです。したがって、Low-E ペアガラスというのは2枚一組のガラスの1枚にコーティングを行い赤外線や紫外線を反射させるようにしたガラスで、2枚のガラス間にはアルゴンガスが封入されています。アルゴンは原子番号18の不活性ガスで封入ガスにはぴったりの性質を持っています。このガスを12ミリ間隔(対流の起こりにくい上限値)の2枚のガラスの間に封入することにより熱を通しにくくしているのです。

 このLow-E ペアガラスには、コーティングをガラスのどの面にするかにより、外からの熱をカットして室温が上がらないようにするタイプと室内の熱を反射して室温が下がらないようにするタイプの2種類があります。岡山県南のような温暖な地域では通常前者が使用されるということなので、わが家でもこれを採用しました。

 実際に住んでみるとこのガラスは本当に驚くほど高性能で真夏の朝のぎらぎらするような太陽光が東の窓からもろに射し込んでも暑くありません。逆にこれだけ高性能なために冬のリビングに差し込む柔らかい光が全く暖かくありません。日溜まりにいてもひなたぼっこができないのです。

 Low-E ペアガラスは決して魔法のガラスではなく、外からの熱を遮断するか、室内の熱を反射するかのどちらかしかできません。ひなたぼっこをしたいのなら室内の熱を反射して室温が下がらないようにするタイプのLow-E ペアガラスを使わなければなりません。

 冬のひなたぼっこにあこがれている方や、猫といっしょに住んでいる方は要注意です。

 


 38.欲を出さないバカ

 

 わが家では、どちらが投入した資金を有効に回収できるかよ~く考えて、OMソーラーをやめ、太陽光発電に方針変更しました。さて、具体的にはどうやったら太陽光発電システムを効果的に(さいふに優しく)設置できるかと、インターネットでいろいろと調べ回っていて、見積り工場というサイトを見つけました。このサイトの売りは、こちらの建物の設置条件を入力すれば、実際に施工可能な何社か(複数)に見積りを取ってもらえるということです。さっそくピーセン・ピースのわが家案を入力してみました。

 

 数日後、3社から簡単な設置の提案図面と見積りが届きました。一般家庭に太陽光発電システムを設置する場合は、4kw程度の発電能力を持つパネルを並べるのが普通です。このくらいであれば普通の屋根なら無理なくパネルが並べられ、電気の使用量の少ない月には買電と売電の金額がとんとんになるくらいの発電ができるからでしょう。セオリーどおりA社、B社は約4kwの提案と見積りを出してきましたが、残るC社の提案に驚きました。大胆にも南向きの大屋根全面を利用し、約7kwのパネルを並べるというものだったからです。

 

 使用量とのバランスなどは始めから考えないで、並べられるだけパネルを並べてどんどん発電し、余ったら売ればいいという考えです。モトが取れるシステムなら、多く投資してもモトを取った後の見返りは多くなります。生活パターンを見直して、単価の高い昼間は電気を売り、単価の安い深夜電力を買うようにすれば、さらに効率よく投資したお金を回収できそうにも思えます。また、たくさん並べた方が1kw当たりの設置コストは当然割安になります。こんな皮算用をして、わが家は何のためらいもなく7kwの案に飛びつきました。

 

 わが家は屋根の向きがほぼ真南で、勾配のきつい大屋根なので太陽高度の低い冬でも太陽光とパネルの角度が小さくなりません。周囲に日光を遮る物は何もないので、ただ晴れてさえいれば、太陽光が燦々とパネルに降り注ぎます。さらに、岡山は「晴れの国」と言われるほど、晴れの日が多いのです。わざわざ太陽光発電のために設計したような好条件が揃っているので、設置工事をした業者の営業マンに「うちの屋根で思ったほど発電できなかったら、日本中どこに行っても思ったほど発電できる屋根はないよ。」と冗談で言っていましたが、実際営業マンも驚くほど効率良く発電しています。

 

大屋根全面にパネルを並べています。

 

 

 さらに平成21年12月から売電の単価が上がり、10年間は48円/kwhで買い取って貰えることになりました。5年間の発電実績から、年 280,000円が期待できます。太陽光発電を導入しようと決めたときのわが家のスローガン「電気は買わない、売るばっかり。」が現実になりました。

 

 「舌切り雀」や「こぶ取り爺さん」の例を出すまでもなく、たいていこの世は欲を出すと失敗することに決まっていますが、この場合は欲を出して、設置した工事屋さんもわが家も得をしたという珍しいケースになりました。たまには欲を出してみるものです。

 


 39.ちょっとだけやりたいバカ

 「せっかくログハウスを建てるのだからせめて壁ぐらい人力で積み上げたい」とか「丸太1本ぐらい自分で皮をむいでみたい」というのをよく「夢丸」で見かけます。ちょっとだけというのがミソで、1日くらいならへとへとになっても楽しいし、仲間に応援を頼んでも快く来てくれるし、それなりに自分の出来ることをやったという充実感も得られるということなのでしょう。

 しかし、こんな作業参加は私に言わせればピントはずれもいいとこです。重い丸太を高所に上げるというのは最も機械が得意とする作業です。これをわざわざ人海戦術でやるプロはいません。プロもやらないようなことをわれわれシロートがやって得になる訳がないとまず考えるべきでしょう。

 人力で壁を積むという重作業(おまけに危険も伴う)はシロートの人海戦術には全く適していません。それに、他人が刻んだログをわざわざ手で積んでみたところで面白くも何ともないと私は思います。まあ、がんばって壁が無事に積めたとしても、棟木を上げるところまではとうていシロートの人海戦術の手には負えないので、どっちみちレッカーのお世話にならなければなりません。シロートの人海戦術では丸1日かかる作業でもレッカーを頼めば半日もかからずに余裕で終わるので、多少レッカー代が浮いたとしても打ち上げの宴会をするようでは、コスト的なメリットもありません。

 それでは皮むきはどうでしょうか。業者さんとしてはせっかく手伝ってくれる施主様に節だらけでこぶこぶの丸太をむかせる訳にもいかないので、わざわざ素性のよさそうな丸太を選び、刃物を研ぎ、作業場の足もとを片づけ、飲み物や、場合によっては指導係、写真係まで用意して万全の準備をしなければなりません。こんなにお膳立てして貰って、1本や2本むいでみたところで慣れない作業で手に豆ができるくらいがオチで、木のことなど何も分かりはしません。結局、ログハウス作りはこんなに楽しいというメッセージを発信したい雑誌社の思惑と、ちょとだけやったふりをして雑誌に載りたい施主様の思惑が合致したために、業者さんの手を煩わせることになっただけのことです。

 多少苦しくてもいい思い出ができ、浮いたレッカー代で仲間と宴会をやり、いっぱしの棟梁気分も味わえるという甘い期待を持ってやってはみたものの、丸太は重くて堅くて見るのも嫌になっただけというのではとても満足できるものではありません。とにかく苦しい目をしたという思い出なら何でもいいと思っているMな人以外は、こんな非効率的な作業をやるべきではないのです。

 その気になって考えると、役に立って、得る物もあって、自分の家に手作りの証を残せるような作業はいくらでもあります。例えば、丸太を2、30本むいてみて、自分の一番気に入ったのをここぞという所に使ってもらう、オリジナルのノッチを考案してビルダーさんと一緒に刻んでみる、階段をデザインして原寸図を書いてみる、窓を改造して出窓に仕立ててみる、といった作業です。

 業者さんはちょとだけやってみる以上に嫌がるでしょうが、一番偉いのは施主様ですからここは腹をくくらなければなりません。どんなことをしてでもやり遂げる、そしてどんなことになってもすべての責任は自分で取る、と腹をくくれば業者さんも苦笑いしながら協力してくれるはずです。それに、たとえ痛恨の失敗をしたとしても自分の家ですから、誰に遠慮することも言い訳することもありません。ハンドメイドのログハウスはこんな失敗が欠点になるようなヤワな建物ではないのです。

 


40.山火事になりかけたバカ

 

 「どんぐり館」の屋根がかかり妻壁や建具も入った頃のある日曜日の朝のことです。前夜のたき火の残り火を熾(おこ)してコーヒーをいれたりしながら、外でぼーっと作業の段取を考えていると、100mほど離れた区画で草刈りをしている人が何かばたばたしているように見えます。しばらく観察していたら、火事になりかけていることが分かりました。せっかく完成前に腐る心配もなくなって余裕が出てきたのに山火事に巻込まれては大変です。すぐに走って応援に行きました。

 

 向こうは3人、こちらも3人くらいだったと思います。草を燃やした火がそのあたりの枯草に移って、あちこちで炎が上がっています。炎が上がっている所を踏んだり、箒(ほうき)でたたいたりして消すのですが、消えたと思って他の炎をやっつけていると、少し風が吹いただけで消えたはずの炎がぼっと復活します。

 山火事というのは、こうやって起るのかと感心している暇はありません。これではだめだと思い、バケツリレーに切替えました。こんな時は、心を落ち着けて最善の方法を考えるよりも、思いついたことをすぐやってみてだめならさっさと次の方法に切り替える方がたぶん正解です。草刈していた人の一人は大慌てで消防署に電話をしに行きました。(当時はまだ携帯電話が普及してなかった)

 

 踏んだり箒でたたいたりするよりは少しずつでも水をかける方が幾分効果があったようで、悪戦苦闘の末何とか消すことができました。やれやれと半ば放心状態になって草の上に転がっていると、おもむろに消防車が登場しました。仰々しい防火服に身を包んだ消防士さんが降りて来て、焼け跡をちらっと見るなり「これは大したことはないですな。」となにごともなかったかのように言い、さっさと消防車に乗り込んで帰って行きました。大目玉でもくらわすのかとちょっと期待していたわれわれは拍子抜けし、放水するところが見たくてやって来ていた女子高生はしょんぼりと帰って行きました。こんなほのぼの感(山火事になりかけたというのに全く緊張感が表に出ない)も田舎のよさかもしれません。

 

 大の大人が3人もいて、もう少しで山火事になりかける。あまりにも軽率でバカ丸出しです。あのとき、もう少し風が強かったら、あるいはわれわれがいなかったらと思うとぞっとします。山火事になりかけただけならバカで済みますが、山火事になってしまってはバカでは済みません。火を点ける時はバケツ1杯の水を肝に銘じて欲しいと思いました。